こんにちは!シンです。
前回の記事では日本の配当投資を行ったときの配当控除について書きました。
端的に言うと、出口戦略として現在の日本の税制度ではインデックス投資よりも
日本企業への配当投資の方が有利ということになります。
そのため、日本企業からの配当金はFIREとの相性がいいことになります。
力作になるのでそちらも読んでいただけたら幸いです。
そこで、今回は海外への投資で得られる配当金の二重課税を回避する方法である
外国税額控除について書いていきます。
なぜ外国税額控除を取り上げる?
なぜ、今回外国税額控除を取り上げようと思ったかというと、
きちんとした控除額を知りたかったから
これです。
今まではなんとなく
確定申告しておけば税金が戻ってくるんでしょ
と考えて確定申告をしていました。
実際にそれでも税金が戻ってくることには変わりないのでいいと言えばいいのですが、
理解していないと控除額が把握できずFIREを想定したシミュレーションができないので
記事にすることにしました。
そして、調べてみると
マジ、分かりにくい。
何が分かりにくいかと言うと、
言葉が難しい
僕の頭ではすぐに理解することはできませんでした。
しかも調べるサイトの多くは、
別のサイトの焼き直しみたいな形で言葉を変えていないから
どこを見ても分からん。
という現象になっていました。
海外投資で得られる配当金には二重課税がかかっている
外国株に投資をしていると、現地の国での税金と日本での税金とで、
二重に税金を引かれています。
この二重課税を回避する方法が外国税額控除です。
最終的に外国税額控除をしないと、30%近い税金が取られるのか。
これは無視できないね。
詳しく掘り下げていくと
「居住地国課税」などが絡んでくるのですが、
現時点では外国に投資してそこで利益を出すと
「現地の国」と「日本」の2ヶ国で課税されていると覚えておいてください。
外国税額控除の対象者
配当控除のように外国税額控除も対象となる条件があるんでしょ?
そうですね。
外国税額控除を受けられる対象者は以下の通りです。
- 日本に住んでいて、外国株式・外国ETF・外国投資信託で配当所得を得た人
- 日本に住んでいて、外国で不動産所得や売買益を得た人
- 日本の企業が海外で得た所得
この記事は個人へ向けての記事になりますので、③は除外します。
また、NISAに関しては日本国内の所得税と住民税が非課税となるため、
外国税額控除の対象外になります。
(現地の国の税金は徴収されます)
外国税額控除の限度額
外国税額控除には限度額があります。
(ここがこの記事で一番大事なところです)
それについて解説していきます。
- 所得税額の外国税額控除限度額(A)
=その年の所得税額(B)×(その年分の国外所得総額÷その年分の課税所得)(C)
多くのサイトでこの計算式使われているけど、なんなの?
国税庁のHPから持ってきただけだと思うけど、
素人がこれだけ見て理解できる人いるの?
僕も正直これを見たときには
「は?」
と思いました。
ここではより分かりやすく解説します。
まず、上記式の(B)の値を出しましょう。
その年の所得税額(B)は「その年の課税所得」に「税率」を掛けた後に「控除額」を引いたものになります。
→ その年の所得税額(B) = その年の課税所得×税率ー控除額
上記の式を見ても分からないと思うので最初は課税所得を把握しましょう。
課税所得は前回の記事でも出てきたもので、下図のように求められます。
上の図は前回の記事の図に今回のテーマである外国の配当所得を足したものになります。
給与所得と所得控除に関してはサラリーマンであれば源泉徴収票を見ればその通りに書かれているので
すぐに分かります。
「税率」と「控除額」は以下の表に沿って求められます。
つまり、課税所得が600万円の人は所得税0.2(20%)を掛けて控除額42万7,500円を引きます。
- 600万円×0.2ー42万7,500円=77万2,500円・・・その年の所得税額(B)
課税所得の中に含まれているアメリカでの配当金が30万円だった場合に外国税額控除の限度額が以下のように算出します。
- 77万2,500円(B)×(30万円(アメリカの配当金)÷600万円(課税所得))
=3万8,625円・・・外国税額控除の限度額(A)
→(B)×(C)=(A)
次にアメリカで引かれる税金について求めましょう。
アメリカは税率が10%であるため、
- 30万円(アメリカの配当金)×0.1(10%)(アメリカの税)=3万円となり、
外国税額控除の限度額(A)以下であるため全額控除されます。
つまり、サラリーマンなら源泉徴収票を見て
「課税所得」を確認して、
日本企業から配当金がもらっているなら
「日本の配当金」を加算して
さらに外国でもらった「外国の配当金」を加えると
その年の所得額が求められるってことだね。
その年の所得額が分かったら国税庁のHPなどで公開されている
所得税の速算表を見て「税率」と「控除額」から
その年の所得税額(B)を求められるってことだね。
そして「外国の配当金」を「その年の課税所得」で割ることで
(C)を求めることができます。
その(B)と(C)を掛けると外国税額控除の限度額(A)を求められます。
その外国税額控除の限度額(A)が、
外国の配当金×外国税の値を出した後に限度額以下であれば全額控除、
オーバーしていると、オーバー分は控除されないということになります。
控除限度額の余りは繰り越せる
先述した計算で控除額を下回って控除限度額が余った場合は翌年以降にその余りを繰り越すことができます。
繰り越せる期間は3年間なので、その点は注意が必要です。
実際に計算してみた
ここでは2021年8月現在の僕の外国税額控除の限度額を計算してみたいと思います。
僕は外国はアメリカにしか投資していないですが、
現在は$3,373が年間で受け取れることになります。
2021年8月1日現在は1ドル109.7円なので、それで計算すると、
$3,373×109.7=370,018円になります。
厳密には今年に入って買い増した分もあるので、
上記よりは少し少ないと思います。
日本株の配当金と本業収入を足しても恐らく税率20%で控除額427,500円のところに収まると思います。
計算式を出すと何もかもばれるのでボカますが、
計算すると大体限度額が5万円以内には収まりそうなので、その限度額と
370,018円 ×0.1(アメリカの税金10%)=約37,000円
を比較すると限度額以内に収まるため、
約37,000円が丸々戻ってきつつ、差額分の約1万円も繰り越せるということになります。
最終的には、
$3,373×0.72(日米の税金)=$2,428
$2,428×109.7(現在の為替)=266,351円
266,351円+37,000円(アメリカでの税金10%)=303,351円(年間配当)
2021年のアメリカでの投資分の配当金は303,351円が想定されます。
重要!申告不要制度を利用すると外国税額控除を受けられない
ここまで外国税額控除のことを書いてきましたが、
ここで重要な注意点があります。
外国税額控除を受けるには確定申告をする必要があります。
総合課税で確定申告を行うことで税金を取り戻せるということを紹介しました。
しかし、総合課税で確定申告をすると住民税に関しては税金を多く取られます。
そのため、住民税に関しては申告不要制度を利用することがいいのですが、
住民税の申告不要制度を利用すると外国税額控除を受けることができないというデメリットがあります。
改めて申告不要制度を利用した場合のメリットとデメリットをまとめます。
住民税の申告不要制度を利用するメリット
- 総合課税で確定申告した際でも住民税の申告不要制度を利用することで住民税の税率を5%のままにできる
→確定申告した方がいいかは収入によるため、詳細は過去の記事をお読みください。 - 申告不要制度を利用することで、自治体には前年度の所得が0と認識され、FIRE2年目以降に最安値で国民健康保険に加入できる
→詳細は過去の記事をお読みください。 - FIRE2年目以降に国民年金の免除制度を利用することができる
→免除制度を利用すると将来にもらえる年金が減ったり、デメリットがあるのでご注意ください。
①の詳細はこちらの記事をお読みください。
②の詳細はこちらの記事をお読みください。
住民税の申告不要制度を利用するデメリット
- 外国税額控除を受けられない
→外国税額控除で戻ってくる金額と申告不要制度を利用しない場合の住民税を比べて
メリットが多い方を選ぶ必要があります。
住民税の申告不要制度にはメリット、デメリットがあります。
基本的に日本株からの配当金が多い人は申告不要制度を利用した方がいいと思います。
逆に外国株からの配当金が多い人は申告不要制度を利用しない方がいいと思います。
詳細は外国株からの配当金の還付金と住民税を申告した際の税金とを比べる必要があります。
あとがき
外国税額控除について書いてみました。
こちらも調べてみると難しいですし、分かりにくかったです。
最後に書きましたが、確定申告をした際に住民税の申告不要制度を利用すると
外国税額控除を受けられません。
参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。